北米では18000Lbs(約8.1トン)以下のトラックのブレーキに従来から
ハイドロブースターという、失陥時バックアップ装備のオール油圧のブレーキシステムを採用している。
これは乗用車のようなバキュームアシストではなくパワーステアリング用の油圧ポンプをアシスト力発生のために使用している。
日本でもGVW7.5トンクラスの小型車由来の中型車に1990年代から使用し始めた。
一方、これとは違って日本の伝統的な中型車はエアーオーバーハイドロリックというエアアシストの油圧ブレーキを装備している。
米国人的な発想によるとヨーロッパ由来の複雑な混合システムではなくフルエアーかオール油圧かどちらかにするべきでエアーオーバーなどというものは不合理とのことである。
ハイドロブースター装置の不安点はパワーステアリングとブレーキを同時に作動したとき油圧能力が一時的に不足するかもということであった。市場ではおそらく非常に特殊なハンドホイール急作動時にブレーキをかけた場合に操舵が少し重くなるというような苦情があったと聞いているがこれはレアケースではないかと思う。

軽量化技術として材料メーカーがしのぎを削っています。
従来の鉄に代わってアルミニウムとか樹脂を使用した提案があるなかで
鉄鋼メーカも高張力鋼板へのシナリオがあるようです。
トラックのフレームでは従来550MPa級の材料に集約されてきましたが、技術革新によって
さらに高応力に耐える材料が提案されています。
薄板化などによって軽量化して力の入力に対して応力が増えても材料強度がアップするので
破損しないというシナリオです。
ところがトラックのフレームは曲げやねじりに強度的に耐えなければならないのですが、一方で剛性を落とすわけにはいかない事情があります。フレームの剛性を落とした場合、架装物の耐久性に影響を与える場合があります。
大きく変形した場合静止状態での尻ダレやねじれの発生の恐れがあり、顧客からの苦情につながることもあります。
たとえ大応力に耐えても剛性をある一定の値に保持する必要があります。
したがって高強度材に変更して軽量化を単純に狙えない事情もあります。
トラックのフレームの基本的な考え方は不規則な巨大入力に対して腕力で対抗するのではなくある程度受け身でしなやかに対抗するということですが単純に高強度材を使えばよいというものでもありません。
ただし高強度材のコストがそれほど上がらなければ軽量化ではなく信頼性向上のためには有効な手段です。
世界的に展開したトラック製造グループではその規模の増大を利益に結びつけようとします。
その手段としてグローバル企業化した企業の海外の幹部が考えることは部品を世界的なサプライヤーに集約して一部品あたりのボリュームを増やす戦略です。部品のジャイアンツはブレーキ関係部品はヨーロッパ勢が支配的です。ステアリングシステムはZFやTRWに対してローカル企業が価格面での競争力を維持しており日本勢がまだ国内市場を制しています。エアサス以外のサスペンションはヘンドリクソンなどの米国勢勢はいますが日本市場への浸透意欲がなくローカル勢が優勢です。エアサスペンションは日本勢は見る影もなく欧米勢のものです。フレームは欧米勢に日本での供給体制がなく浸透が難しいようです。エンジンの燃料噴射装置はDENSOがグローバル勢の一員ですので海外勢を凌駕している状況でしょう。小物部品のナイロンチューブやワンタッチコネクターや尿素噴射システムなどは海外勢が優勢です。まとめますと、コストのマジョリティーを占める部品を全てグローバル企業にすることは時期尚早ということであるといえます。設計自体を欧州と統一したいという欲求が欧州の幹部にありましたが、欧州の大型トラックの形態がトラクタートレーラーが主体であるのに対して日本ではその形態の普及が狭い国土のためにできずフレームなどの構造部品の統一が非常に困難な状況です。一方欧米間の共通化の最大の障害はキャブの形態がキャブオーバーという欧州型とボンネットを有するコンベンショナル型が必須の米国との違いです。VOLVOは苦労しながらもできるだけの共通化を図っています。日本はシャシー形態がの違いが足かせとなって共通化がなかなか寿司まない状況です。ホイールベースを長めに設定せざるを得ないストレートトラックと短ホイールベースのトラクターでは最適なフレームの断面形状が違い、統一は困難です。一種類の数を増やしてコストを低減するという狙いは必ずしも正解ではなかったといえます。キャブを取り巻く状況も欧州と日本では違い、もし数の多い欧州のキャブに統一したとすると狭くて高いキャブで国内のデファクトスタンダードである広くて低いキャブとの競合がむずくしくなります。

機能の評価において試験の手順を厳密に指定して、結果が基準値に達しているかどうかによって可否を判断するというのが定石であるが時間的空間的な環境条件が変化した場合結果がばらつくのは避けられない。それを簡単に避ける手段は同時に同環境での比較試験と考える。
以前中国でユニバーサルジョイントのベアリング損傷問題を取り扱っていた時、サプライヤーの水噴射可能な試験設備にA, B2仕様を並べて同時に可動耐久試験により水の侵入程度を比較して対策仕様を決定したことがある。シール方式に有意な差があったことが簡単に証明された。
当時の担当者は、国際的な試験スペックを研究してA、B別々に完ぺきな試験をしなければならないと考えていたようである。
この結果短期間で慢性的な不具合が解消された。

インホイルモーター(IWM)は日本では一部のベンチャー企業のもので今やマイナーな存在であるが、中国ではその概念がより一般的になっていると思われる。
中国のBYDという企業がIWM駆動のバスを市場に出していて日本にも少量の輸出をしている。
最大の課題はばね下重量が大きく乗り心地に影響する恐れがあるということである。
これを重視して開発そのものを諦める例が日本のOEMに見られる一方、これをデメリットと見ながらも克服策を実現している新興OEMも見受けられる。
車両設計の見地から注目すべきはドライブシャフトを持つ従来型のFF車がタイヤ(ホイル)中心に推力が発生すると考えるのに対してIWMは路面とタイヤの接点に推力が発生すると考えるという違いである。従来の高出力のFF車ではセンターオフセット(ホイルセンタ付近でのホイル中心とキングピン軸との距離)を小さくして加減速時のタイヤステア角への影響を最小にするためのアダプタ追加(例;ホンダのダンパーフォーク)が必要であったがIWM車ではタイヤ接地点に推力が発生するため従来型のセンターオフセットに機能的に相当するキングピンオフセットが0に近いので付加的な機構は不要でシンプルな構造にできるメリットがある。制動時の力学的な状況はIWMも駆動軸型の従来車も同じ条件である。
従来型のFF車の最近のトレンドはネガティブオフセットとしている。これ自体のメリットを論じている論文もあるが、キングピン角を変えずにFF車のトルクステア対応でセンタオフセットを減らした影響と見ることもできる。IWM車はあえてネガティブオフセットとする必要はない。
シャシーのパラメータは総合的俯瞰的に考えられているため一つ一つのパーツの適否判定は難しい場合があるのでこの評価は避けたい。