当事務所の売りの一つに重ね板ばねの応力適正化による軽量化技術があります。
しかしながら重ね板ばねそのものが乗用車では絶滅し、トラックでも絶滅危惧種になりつつあり、先行きこの技術自体の需要の継続が見込めない状態です。
中国にはコロナ前まで10年来の関わりを持っておりましたが、板ばねを使用した大型トラックの品質改善に取り組んでおりました。
彼の地ではトラックの技術に関して10年前は相当遅れた状態にありましたが、日本ではなくヨーロッパの技術が急速に導入されているようで近年様変わりしつつあるようです。
例えばリヤエアサスペンションは10年前は皆無でしたが現在は商品化例が見られます。
コンチネンタルとファイヤーストーンが代理店を運営しいるようです。
板ばねもロングテーパーリーフを普通に設定しています。
しかし現製品のラインアップを見る限り仕様が複雑に混在しており、実際の出荷数は重ね板ばねが主流のようです。これを、特性やスパンを変更せず先端部のみをテーパー化するだけで台当たり50kg程度軽量化することは容易にできました。キャブ関連部品などで必死にグラム単位の軽量化努力をしているのが滑稽でした。
ばねの設計が古いためか薄板を相当数重ねた仕様がオリジナルですので厚板かのみでも軽量化が容易にできました。
エンジンを弾性体を介して車体に取り付ける際、エンジン振動の伝達をできるだけ
少なくするようにゴム製の弾性体の形状や特性を工夫してきた歴史がある。
直方体のゴムの圧縮およびせん断変形(ひずみ)と剛性を決定するときエンジンのロール方向の振動と他の自由度の動きが連成しないようにする理論があり、
ゴムの取り付けの最適な角度が存在するというがどこまで実用的かは判断できない。
液体封入ゴムは主にゴムのせん断変形時にオリフィスを通じて液体(主にエチレングリコール溶液)が移動する際の減衰効果を利用した製品である。
筆者はかつて中小型トラックのキャブマウントにこれを適用した開発に携わった。
当初はキャブサスペンションとして乗り心地に寄与すると想定したが乗り心地よりキャブの車内音
の低減に顕著な効果を見出した。中小型トラック開発で分かったことは後ろのキャブマウントの動ばね定数を低く、ロスファクターをできるだけ大きくする設定が理想であったということを記憶している。検証には田口先生の指導を得て品質工学の手法を用いた。
前節ではトラックの独立懸架は小型トラックでの成功例がある旨を述べた。
大型トラックにおいてはVOLVOが商品化しているとのことがNET情報にある。
ダイムラーにおいては商品化に至っていないようである。
欧米の大型トラックはサスペンションのストロークを十分とっており、フロントのばね定数を十分低く設定できる。通常ロングスパンのパラボリックスプリングやロングテーパースプリングを採用しておりばね枚数も1、2枚にして固体摩擦を最小限にしている。したがって乗り心地の向上をIFSに求める必要が乏しい。ただばね下質量を軽減して路面への追随性を向上することによる乗り心地向上の余地はあるがドライバーが実感できる商品力とするまでには至っていないのが現状であろう。
VOLVO気づき事項
Steering gear
R&P軸後方配置knuckle arm後出し
左右走向角差に有利
pinion軸は前後方向 bevel gear前配置か
高推力必要
Air spring
As/aw<1 (0.43?) spring高負荷
ばね上片側3,000kg(29,400N)とするとspring負荷29,400/0.43=68,372N
高ガス圧(1400KPa)必要か?
Kingpost構造
kingpin有り。アーム揺動のhinge機能と操舵時のhinge機能の分離
Lowerに大径のball仕様を避ける
Rigid axle同様の耐久性確保
(乗用車のU/L ball joint構造と違う)
King pin傾斜 Caster Camber が上下pivot位置と独立して決定できる
Lower Arm 鎌型(sickle) 前方直線
Disk Brake
Shock Absober 軸前方配置
U/LArm layout Antidive geometry 効果小
Air spring Φ323 ばね間隔850mm
高負荷
There used to be a cliche that IFS truck is not suitable due to tough usage. Instead rigid axle in which L/R axles are fixed is said to be necessary.
In deed, in the IFS system, vulnerability around connecting parts like ball joint exists.
Moreover, ground clearance for IFS changes depending on spring stroke. This may make damage on chassis. However, 1990's we succeeded in production of IFS cab over type light duty truck. The reason is the light cab over type truck has a several constrains.
We could get around it by adopting IFS . The measure advantage of IFS is to enable to enhance roll stiffness, so that wheel rate could be decreased.
一般的にトラックは荷重条件が厳しいのでフロントアクスルを独立懸架とするより
左右を分割しない車軸を懸架する方式とするのが旧来からの鉄則です。
独立懸架はボールジョイントやブッシュといった回転接合点が多くなり高入力の繰り返しに対する脆弱性があります。かつて自衛隊の車両でジープの独立懸架ができなかったのはパラシュート降下想定の負荷基準に独立懸架では対応しえなかったためと言われています。
さらに車軸懸架は極悪路走破時にグランドクリやランスを一定に保持するという特性があるということが評価されてランドクルーザーがかつて車軸懸架に固執していたと言われています。
以上のことから近年まで過酷な使用状態が想定されるトラックは独立懸架は不適当であるとされてきていました。
1990年ごろ、丁度筆者が関わっておりましたが、小型キャブオーバートラックの開発においてシャシーの商品力を大きく向上させれる計画が、好調な経済を背景に事業化されました。
小型キャブオーバートラックのベース車は全高が2m以内に制限されていて、さらに①乗員、②エンジン、③フロントアクスルを垂直に重ねた配置であるため、パッケージング成立のためにばねの上下ストロークを制限せざるを得ない弱点を抱えていました。
このため乗り心地は最悪で乗員に我慢を強いる結果になっていました。
独立懸架にすることによって、車軸懸架の場合のタイロッドなどとエンジンのオイルパンとの隙間を確保しなければならない制約を回避でき、タイヤとフロアやエンジン遮音カバーとの隙間もタイヤの上下移動に伴う包絡線が有利に変化することにより、ばねの利用可能なストロークが大きくとれました。
この結果、ばね定数を低く設定でき、乗り心向上に寄与しました。従来の車軸懸架では狭いばねトレッドのため、ロール剛性が低かったのが、独立懸架の場合、機構的にタイヤのトレッドがロール剛性のパラメーターになることから低いばね定数でもロール剛性を十分確保できました。この結果、従来キャブチルト機構の影響から車体傾斜が発生していましたが大きなロール剛性がその影響を回避する効果もありました。
以上の効用からキャブオーバー型小型トラックにおいて前輪独立懸架はデファクトスタンダードになりました。