エンジンを弾性体を介して車体に取り付ける際、エンジン振動の伝達をできるだけ
少なくするようにゴム製の弾性体の形状や特性を工夫してきた歴史がある。
直方体のゴムの圧縮およびせん断変形(ひずみ)と剛性を決定するときエンジンのロール方向の振動と他の自由度の動きが連成しないようにする理論があり、
ゴムの取り付けの最適な角度が存在するというがどこまで実用的かは判断できない。
液体封入ゴムは主にゴムのせん断変形時にオリフィスを通じて液体(主にエチレングリコール溶液)が移動する際の減衰効果を利用した製品である。
筆者はかつて中小型トラックのキャブマウントにこれを適用した開発に携わった。
当初はキャブサスペンションとして乗り心地に寄与すると想定したが乗り心地よりキャブの車内音
の低減に顕著な効果を見出した。中小型トラック開発で分かったことは後ろのキャブマウントの動ばね定数を低く、ロスファクターをできるだけ大きくする設定が理想であったということを記憶している。検証には田口先生の指導を得て品質工学の手法を用いた。
前節ではトラックの独立懸架は小型トラックでの成功例がある旨を述べた。
大型トラックにおいてはVOLVOが商品化しているとのことがNET情報にある。
ダイムラーにおいては商品化に至っていないようである。
欧米の大型トラックはサスペンションのストロークを十分とっており、フロントのばね定数を十分低く設定できる。通常ロングスパンのパラボリックスプリングやロングテーパースプリングを採用しておりばね枚数も1、2枚にして固体摩擦を最小限にしている。したがって乗り心地の向上をIFSに求める必要が乏しい。ただばね下質量を軽減して路面への追随性を向上することによる乗り心地向上の余地はあるがドライバーが実感できる商品力とするまでには至っていないのが現状であろう。
VOLVO気づき事項
Steering gear
R&P軸後方配置knuckle arm後出し
左右走向角差に有利
pinion軸は前後方向 bevel gear前配置か
高推力必要
Air spring
As/aw<1 (0.43?) spring高負荷
ばね上片側3,000kg(29,400N)とするとspring負荷29,400/0.43=68,372N
高ガス圧(1400KPa)必要か?
Kingpost構造
kingpin有り。アーム揺動のhinge機能と操舵時のhinge機能の分離
Lowerに大径のball仕様を避ける
Rigid axle同様の耐久性確保
(乗用車のU/L ball joint構造と違う)
King pin傾斜 Caster Camber が上下pivot位置と独立して決定できる
Lower Arm 鎌型(sickle) 前方直線
Disk Brake
Shock Absober 軸前方配置
U/LArm layout Antidive geometry 効果小
Air spring Φ323 ばね間隔850mm
高負荷
There used to be a cliche that IFS truck is not suitable due to tough usage. Instead rigid axle in which L/R axles are fixed is said to be necessary.
In deed, in the IFS system, vulnerability around connecting parts like ball joint exists.
Moreover, ground clearance for IFS changes depending on spring stroke. This may make damage on chassis. However, 1990's we succeeded in production of IFS cab over type light duty truck. The reason is the light cab over type truck has a several constrains.
We could get around it by adopting IFS . The measure advantage of IFS is to enable to enhance roll stiffness, so that wheel rate could be decreased.
一般的にトラックは荷重条件が厳しいのでフロントアクスルを独立懸架とするより
左右を分割しない車軸を懸架する方式とするのが旧来からの鉄則です。
独立懸架はボールジョイントやブッシュといった回転接合点が多くなり高入力の繰り返しに対する脆弱性があります。かつて自衛隊の車両でジープの独立懸架ができなかったのはパラシュート降下想定の負荷基準に独立懸架では対応しえなかったためと言われています。
さらに車軸懸架は極悪路走破時にグランドクリやランスを一定に保持するという特性があるということが評価されてランドクルーザーがかつて車軸懸架に固執していたと言われています。
以上のことから近年まで過酷な使用状態が想定されるトラックは独立懸架は不適当であるとされてきていました。
1990年ごろ、丁度筆者が関わっておりましたが、小型キャブオーバートラックの開発においてシャシーの商品力を大きく向上させれる計画が、好調な経済を背景に事業化されました。
小型キャブオーバートラックのベース車は全高が2m以内に制限されていて、さらに①乗員、②エンジン、③フロントアクスルを垂直に重ねた配置であるため、パッケージング成立のためにばねの上下ストロークを制限せざるを得ない弱点を抱えていました。
このため乗り心地は最悪で乗員に我慢を強いる結果になっていました。
独立懸架にすることによって、車軸懸架の場合のタイロッドなどとエンジンのオイルパンとの隙間を確保しなければならない制約を回避でき、タイヤとフロアやエンジン遮音カバーとの隙間もタイヤの上下移動に伴う包絡線が有利に変化することにより、ばねの利用可能なストロークが大きくとれました。
この結果、ばね定数を低く設定でき、乗り心向上に寄与しました。従来の車軸懸架では狭いばねトレッドのため、ロール剛性が低かったのが、独立懸架の場合、機構的にタイヤのトレッドがロール剛性のパラメーターになることから低いばね定数でもロール剛性を十分確保できました。この結果、従来キャブチルト機構の影響から車体傾斜が発生していましたが大きなロール剛性がその影響を回避する効果もありました。
以上の効用からキャブオーバー型小型トラックにおいて前輪独立懸架はデファクトスタンダードになりました。
日本や中国で新卒者中心の素人軍団にシャシーの基本設計を指導してきました。
事業所はMATLABなどのソフトは完備しているものの経験がないエンジニアしかいないことがよくあります。
開発の対象は物流車ということが多いようです。
機構の運動の基礎となるポイントを中国ではHARD POINTと読んでいますが、基本計画時点で定義する必要があります。
まず心がけるべきは物流車は比較的高重心で積車時の重心位置が後方に偏りがちであるということです。
この場合、タイヤのローテーションを重視して後輪をシングルタイヤとした場合操縦安定性を確保する方策をいかに講じるかということが第一のテーマです。
フロントサスペンションは最も安価なマクファーソンストラットを採用したいという例が多々あります。
一般的には商用車の前輪には横方向の入力にたいしてストラットの動きを抑制する恐れが多いため採用を避けますが、安価な先行例があるため採用せざるを得ないこともあります。
旋回外輪に対してToe outとなるようなレイアウトを採用します。
後輪ですがGVWが3.5tonを超える車両の場合リーフスプリングを採用するのが一般的で、MB SPRINTERなどは1枚の樹脂製リーフスプリングを採用しています。
ばね傾斜は大きく前スラントのレイアウトとします。
axle steer でUSを狙うためです。リヤを独立懸架とする必要がある場合、安価な車両ではトーションビームを採用する例が多いようです。
この場合Bushのたわみ(コンプライアンスステア)によりOS特性になる恐れがあります。
設計状態でこれをUSにする必要があり様々な試みが各社でなされています。
このへんが技術指導の要点です。