トラックのサイドレールには様々な用途の小穴が必要である。
また、トラックには様々な用途があり必要な穴の種類が多い。
大型トラックは従来フレーム付きのシャシー状態で工場から出荷されることがほとんどで一般的にはユーザーに渡る前の中間状態がトラックメーカーの製品である。
この中間状態に対して架装メーカーが様々な架装を施す。架装要領書で注意時事項を規定しているが時には不適切な架装によってフレームに亀裂などの不具合が発生することがある。
フレームの亀裂不具合の原因は様々であるがトラックメーカーは極度にそれを恐れる傾向がある。
恐れるあまり昔から設計においてサイドレールに捨て穴を残すななどという掟を設定することがある。
捨て穴とは締結に使用されないで種類削減のために余分に空いている穴で理論的には応力が集中する恐れがあるとされている穴のことである。
VOLVOやDAIMLERと提携した日本のトラックメーカーはグリッドパターンという考え方を導入した。
設計の初期段階で穴のパターンをあらかじめ決めておいて、詳細設計時にその中から使える穴を使い使わない穴はそのままにしておく方式である。
この処置のために設計の煩雑さが大いに軽減されたが、サイドレールウエブ面の捨て穴に応力集中が起きて破損したという事例はないと思う。
中国がまだ開発途上にある1980年代、三菱グループが対中大型商談を成立させて大型トラックの
輸出を開始したもののフレームなどの不具合が続出して数百億円規模の賠償金を払わされた事件がありました。数次にわたる”対策”は亀裂部の補強策で不具合箇所が次々と移動するだけで改善には至らなかったと推察します。当時は、何か人為的な破壊かとの説やとんでもない悪路走行かとか噂されていました。
事件が落ち着いた後フレームの設計に対する考え方を整理して改善策を恒久対策としています。
原因を整理すると、従来のように、大きな力の入力に対して剛性増大のみで対処するという対応が必ずしも有効ではなかったということです。力の大入力ではなく路面の大変異に起因する入力に対処すべきであったということです。具体的には悪路走行時にフレームにねじり変異が入ってサイドレールとクロスメンバーのボルトなどでの締結部に高応力が発生したと思われます。サイドレールは竪壁(ウエブ面)と水平面(フランジ面)とで成り立っていますが、従来、横渡し部材(クロスメンバー)との締結をフランジ面に設置して簡素化を図っていましたが、この構造では締結部に複雑な変形モードが発生します。これが高応力につながったと想定されます。正解はクロスメンバーをウエブ面に締結するということです。
インドネシア輸出で実績のあった小型トラックの設計はこのような変形モードにすでに対処しておりました。また欧米の大型トラックも対処済でした。当時の日本の大型トラックメーカーはまだどこも未対応でしたが現在は主要なメーカーは対応済です。ベンチマークをお家芸とする中国製のトラックも現在対応済で今やデファクトスタンダードとなっています。
多軸車の軸重を均一化して一軸当たりの負荷が片寄ることを防ごうとする試みは
30年以上前にドイツで始まったと聞いている。
軸重のばらつきはアクスルの強度に影響すると思われるが、安全率が十分なためこの程度のばらつきは問題ないと思われる。
問題なのは道路の損傷でドイツで厳格な法規的剛性が求められるということである。これがドイツで前2軸車のイコライザー開発の動機と元開発者に聞いた。
リーフスプリングが前後2連の構造において、最も安価な機構は前ばねのシャックル中心と後ばねの目玉の間に回転中心をもつシーソー状の部品を配置して軸重をバランスさせるという物である。
これは日本の大型トラックでの採用例であるが不整地を走行する建設用車両においての適用例を中国で見た。
この方式は安価であるが荷重が上手く等分されていなかったようである。
ドイツの方式はこのような簡便な物ではなく前後のばねのシャックル同士をリンクで連結した方式である。特長は前後それぞれのステアリング系の動きの干渉を最小化できることと考える。
当事務所の売りの一つに重ね板ばねの応力適正化による軽量化技術があります。
しかしながら重ね板ばねそのものが乗用車では絶滅し、トラックでも絶滅危惧種になりつつあり、先行きこの技術自体の需要の継続が見込めない状態です。
中国にはコロナ前まで10年来の関わりを持っておりましたが、板ばねを使用した大型トラックの品質改善に取り組んでおりました。
彼の地ではトラックの技術に関して10年前は相当遅れた状態にありましたが、日本ではなくヨーロッパの技術が急速に導入されているようで近年様変わりしつつあるようです。
例えばリヤエアサスペンションは10年前は皆無でしたが現在は商品化例が見られます。
コンチネンタルとファイヤーストーンが代理店を運営しいるようです。
板ばねもロングテーパーリーフを普通に設定しています。
しかし現製品のラインアップを見る限り仕様が複雑に混在しており、実際の出荷数は重ね板ばねが主流のようです。これを、特性やスパンを変更せず先端部のみをテーパー化するだけで台当たり50kg程度軽量化することは容易にできました。キャブ関連部品などで必死にグラム単位の軽量化努力をしているのが滑稽でした。
ばねの設計が古いためか薄板を相当数重ねた仕様がオリジナルですので厚板かのみでも軽量化が容易にできました。
エンジンを弾性体を介して車体に取り付ける際、エンジン振動の伝達をできるだけ
少なくするようにゴム製の弾性体の形状や特性を工夫してきた歴史がある。
直方体のゴムの圧縮およびせん断変形(ひずみ)と剛性を決定するときエンジンのロール方向の振動と他の自由度の動きが連成しないようにする理論があり、
ゴムの取り付けの最適な角度が存在するというがどこまで実用的かは判断できない。
液体封入ゴムは主にゴムのせん断変形時にオリフィスを通じて液体(主にエチレングリコール溶液)が移動する際の減衰効果を利用した製品である。
筆者はかつて中小型トラックのキャブマウントにこれを適用した開発に携わった。
当初はキャブサスペンションとして乗り心地に寄与すると想定したが乗り心地よりキャブの車内音
の低減に顕著な効果を見出した。中小型トラック開発で分かったことは後ろのキャブマウントの動ばね定数を低く、ロスファクターをできるだけ大きくする設定が理想であったということを記憶している。検証には田口先生の指導を得て品質工学の手法を用いた。