お知らせ

2020-12-25 12:05:00
In-Wheel Motor

インホイルモーター(IWM)は日本では一部のベンチャー企業のもので今やマイナーな存在であるが、中国ではその概念がより一般的になっていると思われる。

中国のBYDという企業がIWM駆動のバスを市場に出していて日本にも少量の輸出をしている。

最大の課題はばね下重量が大きく乗り心地に影響する恐れがあるということである。

これを重視して開発そのものを諦める例が日本のOEMに見られる一方、これをデメリットと見ながらも克服策を実現している新興OEMも見受けられる。

車両設計の見地から注目すべきはドライブシャフトを持つ従来型のFF車がタイヤ(ホイル)中心に推力が発生すると考えるのに対してIWMは路面とタイヤの接点に推力が発生すると考えるという違いである。従来の高出力のFF車ではセンターオフセット(ホイルセンタ付近でのホイル中心とキングピン軸との距離)を小さくして加減速時のタイヤステア角への影響を最小にするためのアダプタ追加(例;ホンダのダンパーフォーク)が必要であったがIWM車ではタイヤ接地点に推力が発生するため従来型のセンターオフセットに機能的に相当するキングピンオフセットが0に近いので付加的な機構は不要でシンプルな構造にできるメリットがある。制動時の力学的な状況はIWMも駆動軸型の従来車も同じ条件である。

従来型のFF車の最近のトレンドはネガティブオフセットとしている。これ自体のメリットを論じている論文もあるが、キングピン角を変えずにFF車のトルクステア対応でセンタオフセットを減らした影響と見ることもできる。IWM車はあえてネガティブオフセットとする必要はない。

シャシーのパラメータは総合的俯瞰的に考えられているため一つ一つのパーツの適否判定は難しい場合があるのでこの評価は避けたい。

 

2020-12-24 09:59:00
耐久試験

車両の設計の強度上の妥当性を最終確認する必要は大手OEM新興ベンチャー企業を問わず必要なことです。そのメーカーの顧客の使用状況を予測してある条件を設定し、量産可否を判定する必要があリます。この条件はOEMの最高級の社外秘であるべきものです。日本と欧州のOEMは社内に独自の耐久コースを設定することが多いと思われますが、米国では外部の施設を活用することが多いようです。中国では国営のテストコースを活用している例もありますが最近は施設内に独自のコースを設置する傾向があります。社内に独自のコースを設定する場合は想定する市場の悪路に似せた悪路を設置します。問題は市場の長い耐用年数を短い走行距離で再現しなければならず市場より厳しい入力を必要とします。

テストコース内に石畳路やうねリ路を設置してその組み合わせで試験条件をデザインするのが通常です。この辺のサジ加減は必ずしも論理的にゆかないものと想像します。長年かけて市場不具合情報との相関を解析しながら決定するものと思います。

これを台上試験で代替することはOEMにとって工数削減の意味から目指すべきものです。

以前アメリカの台上試験装置メーカーを訪問しました。当時はテストコースの実車での加速度データーを台上試験条件に変換する技術を誇示していました。多くの顧客の使用状況をどう統計的に把握するかという問題は残ります。やはり市場情報から決めるしかないと思います。この情報の蓄積が歴史のあるOEMの実力を示し新興勢力との差が出るところです。中国では大学発のベンチャーが試験全般を請け負うというビジネスモデルを提供して数多の振興の富裕層が自動車ビジネスに参入するのを可能にしているようです。

2020-12-22 12:06:00
商用車

商用車を概念づけるために車両総重量(GVW)をパラメーターとして分類するのが便利なようである。

GVWは物流の歴史的な背景とそれに関わる法規規定によって分類される。

3.5トンというのが一つの基準である。概ねそれ以上がトラック、それ未満が乗用車の流れを汲むと考えられる。乗用車の流れを汲むものはミニバンと呼称されることが多い。バリエーションに人員輸送車と履流車の両方を持つものである。中国でのヒット商品はGMの合弁企業である上海通用五菱の宝駿というブランドの物流車が有名である。一般的にフロントサスペンションはMacpherson Strutを頑固に使用しているタイプとDouble Wishboneとしているタイプがある。リヤは廉価仕様ではToesion-Beam方式を頑張って使用しているタイプとちょっとお金をかけてMulti-Linkにしているものがある。一方トラックの流れを汲むものの代表格はダイムラーのスプリンターである。フロントはMacpherson-Strut 横置き樹脂リーフスプリング リヤはリジッドアクスルで1枚構成の樹脂リーフスプリングを前傾させてAxle-Understeerとしている。

新しい駆動系を使った新規の開発車を中国で商品化したいという計画がしばしば持ち上がるが、この場合売れ筋の車種として宝駿のような商用車ということになる場合が多い。車両の操縦安定性を維持するためにはこのジャンルの車両は一般的に難しい。その理由は①高重心②後輪は重量バランスからダブルタイヤとすべきところ、タイヤのローテーションに有利な後輪シングルタイヤの要求 ③ 空積の荷重差が大きいのでシャシバネ定数の可変対応できれば良いが差が大きい場合 トラックのようなcab suspensionを使いたいところだが運転席と荷室が一体のためそれが困難

従って理想的には電子制御の助けが必要と思われる。一方コストの制限が厳しいため商品化には苦労が多い。安易に手を出して失敗する恐れが十分ある。

2020-12-21 11:20:00
CAE解析

シャシーの構造強度評価をモデル化したデータに入力を加えた時の変位をFEMで解析する手法は世界中で行われている。このモデル化が不正確である場合解析が導く結果の信用性が疑われることもままある。解析の対象が部分的であるので対象外の構造との境界条件に関する人為的な仮定が不正確である場合や入力の大きさと方向の組み合わせが実態から乖離していることなどが原因である。このためある大手のOEMの解析チームは一部切り出しモデルの使用を禁じていた。また、モデルとばらつきを持つ実体の違いから応力集中を見誤り実体の破損を予知できないこともある。CAEを徹底して将来実験不要の開発をするという夢が語られることやベンチャー企業がCAEを過信して試験を省略しようなどと考えがちであるが、CAEを開発プロセスで活用するためにはあらかじめ実験結果との相関性を熟知する必要がある。

2020-12-20 17:20:00

トラックの設計チームにおいては、主要なコンポーネントの設計及び維持管理よりもその周辺の様々な付帯部品の種類の管理であリこれに要する工数が頭の痛い問題である、

付帯部品には小物のブラケットや電線、パイプ類 ホース類がある。

オプション部品が複雑に構成されていて,その組み合わせや両立性の有無などが絡み合って収拾のつかない状況になっている事がある。欧州ではこのパズルに取り組むのは若い技術者であり日本では設計外注の会社のようである。コロナ禍ではエッセンシャルワーカーに皺寄せが行っているような状況がトラックの設計でもあると言える。付加価値が低いと思われているのに手間が異常にかかるいわゆる汚れ仕事と位置付けられているためモチベーションの維持が難しく作業者の定着率も低い傾向がある。

トラック業界は寡頭競争に晒されていて利益率が低く、顧客確保のために多岐のバリエーションを揃えて満足度を得る努力に しのぎを削っている。このことがこの問題の背景である。

 モジュール設計というのはボルボやフォードが熱心に提唱してきた設計の概念である。中間的な共通の塊を作ってそれを組み合わせられるようにあらかじめ設計しておくことによって、全体の種類は多岐にわたる顧客の要望に答えながら、それぞれのモジュールは数種類しか持たないということが理論上可能という理念である。

別の章で論じたフレームのグリッドパターンもその一環である。

開発マネージメントの大きな課題と言える。