中国がまだ開発途上にある1980年代、三菱グループが対中大型商談を成立させて大型トラックの
輸出を開始したもののフレームなどの不具合が続出して数百億円規模の賠償金を払わされた事件がありました。数次にわたる”対策”は亀裂部の補強策で不具合箇所が次々と移動するだけで改善には至らなかったと推察します。当時は、何か人為的な破壊かとの説やとんでもない悪路走行かとか噂されていました。
事件が落ち着いた後フレームの設計に対する考え方を整理して改善策を恒久対策としています。
原因を整理すると、従来のように、大きな力の入力に対して剛性増大のみで対処するという対応が必ずしも有効ではなかったということです。力の大入力ではなく路面の大変異に起因する入力に対処すべきであったということです。具体的には悪路走行時にフレームにねじり変異が入ってサイドレールとクロスメンバーのボルトなどでの締結部に高応力が発生したと思われます。サイドレールは竪壁(ウエブ面)と水平面(フランジ面)とで成り立っていますが、従来、横渡し部材(クロスメンバー)との締結をフランジ面に設置して簡素化を図っていましたが、この構造では締結部に複雑な変形モードが発生します。これが高応力につながったと想定されます。正解はクロスメンバーをウエブ面に締結するということです。
インドネシア輸出で実績のあった小型トラックの設計はこのような変形モードにすでに対処しておりました。また欧米の大型トラックも対処済でした。当時の日本の大型トラックメーカーはまだどこも未対応でしたが現在は主要なメーカーは対応済です。ベンチマークをお家芸とする中国製のトラックも現在対応済で今やデファクトスタンダードとなっています。
多軸車の軸重を均一化して一軸当たりの負荷が片寄ることを防ごうとする試みは
30年以上前にドイツで始まったと聞いている。
軸重のばらつきはアクスルの強度に影響すると思われるが、安全率が十分なためこの程度のばらつきは問題ないと思われる。
問題なのは道路の損傷でドイツで厳格な法規的剛性が求められるということである。これがドイツで前2軸車のイコライザー開発の動機と元開発者に聞いた。
リーフスプリングが前後2連の構造において、最も安価な機構は前ばねのシャックル中心と後ばねの目玉の間に回転中心をもつシーソー状の部品を配置して軸重をバランスさせるという物である。
これは日本の大型トラックでの採用例であるが不整地を走行する建設用車両においての適用例を中国で見た。
この方式は安価であるが荷重が上手く等分されていなかったようである。
ドイツの方式はこのような簡便な物ではなく前後のばねのシャックル同士をリンクで連結した方式である。特長は前後それぞれのステアリング系の動きの干渉を最小化できることと考える。
当事務所の売りの一つに重ね板ばねの応力適正化による軽量化技術があります。
しかしながら重ね板ばねそのものが乗用車では絶滅し、トラックでも絶滅危惧種になりつつあり、先行きこの技術自体の需要の継続が見込めない状態です。
中国にはコロナ前まで10年来の関わりを持っておりましたが、板ばねを使用した大型トラックの品質改善に取り組んでおりました。
彼の地ではトラックの技術に関して10年前は相当遅れた状態にありましたが、日本ではなくヨーロッパの技術が急速に導入されているようで近年様変わりしつつあるようです。
例えばリヤエアサスペンションは10年前は皆無でしたが現在は商品化例が見られます。
コンチネンタルとファイヤーストーンが代理店を運営しいるようです。
板ばねもロングテーパーリーフを普通に設定しています。
しかし現製品のラインアップを見る限り仕様が複雑に混在しており、実際の出荷数は重ね板ばねが主流のようです。これを、特性やスパンを変更せず先端部のみをテーパー化するだけで台当たり50kg程度軽量化することは容易にできました。キャブ関連部品などで必死にグラム単位の軽量化努力をしているのが滑稽でした。
ばねの設計が古いためか薄板を相当数重ねた仕様がオリジナルですので厚板かのみでも軽量化が容易にできました。
エンジンを弾性体を介して車体に取り付ける際、エンジン振動の伝達をできるだけ
少なくするようにゴム製の弾性体の形状や特性を工夫してきた歴史がある。
直方体のゴムの圧縮およびせん断変形(ひずみ)と剛性を決定するときエンジンのロール方向の振動と他の自由度の動きが連成しないようにする理論があり、
ゴムの取り付けの最適な角度が存在するというがどこまで実用的かは判断できない。
液体封入ゴムは主にゴムのせん断変形時にオリフィスを通じて液体(主にエチレングリコール溶液)が移動する際の減衰効果を利用した製品である。
筆者はかつて中小型トラックのキャブマウントにこれを適用した開発に携わった。
当初はキャブサスペンションとして乗り心地に寄与すると想定したが乗り心地よりキャブの車内音
の低減に顕著な効果を見出した。中小型トラック開発で分かったことは後ろのキャブマウントの動ばね定数を低く、ロスファクターをできるだけ大きくする設定が理想であったということを記憶している。検証には田口先生の指導を得て品質工学の手法を用いた。
前節ではトラックの独立懸架は小型トラックでの成功例がある旨を述べた。
大型トラックにおいてはVOLVOが商品化しているとのことがNET情報にある。
ダイムラーにおいては商品化に至っていないようである。
欧米の大型トラックはサスペンションのストロークを十分とっており、フロントのばね定数を十分低く設定できる。通常ロングスパンのパラボリックスプリングやロングテーパースプリングを採用しておりばね枚数も1、2枚にして固体摩擦を最小限にしている。したがって乗り心地の向上をIFSに求める必要が乏しい。ただばね下質量を軽減して路面への追随性を向上することによる乗り心地向上の余地はあるがドライバーが実感できる商品力とするまでには至っていないのが現状であろう。
VOLVO気づき事項
Steering gear
R&P軸後方配置knuckle arm後出し
左右走向角差に有利
pinion軸は前後方向 bevel gear前配置か
高推力必要
Air spring
As/aw<1 (0.43?) spring高負荷
ばね上片側3,000kg(29,400N)とするとspring負荷29,400/0.43=68,372N
高ガス圧(1400KPa)必要か?
Kingpost構造
kingpin有り。アーム揺動のhinge機能と操舵時のhinge機能の分離
Lowerに大径のball仕様を避ける
Rigid axle同様の耐久性確保
(乗用車のU/L ball joint構造と違う)
King pin傾斜 Caster Camber が上下pivot位置と独立して決定できる
Lower Arm 鎌型(sickle) 前方直線
Disk Brake
Shock Absober 軸前方配置
U/LArm layout Antidive geometry 効果小
Air spring Φ323 ばね間隔850mm
高負荷