品質管理
トラックのステアリング系の担当をしていた時、急にハンドルの操作が重くなったというクレームがありました。
高速走行時に発生したら人命に関わる大きな問題になったと思われます。
幸いこの現象は低速走行時にのみ発生するということでした。
最終的にはリコールしましたが、原因を究明にはずいぶん手間をかけました。
ステアリングギヤはインテグラル型というものでした。
この機構は歴史が長く、トラックの車軸車には定番のものです。
基本的にはステアリングポンプで生成した油圧をパワーピストンが受けてパワーアシストとして機能します。
この変異をピットマンアームの回転に変換して操舵力にします。
問題はハンドホイールの回転をシリンダーの並進変異に変換する機構です。
リサーキュレーティングボールというボールベアリングを使ってステアリングシャフトの回転運動をピストンの並進運動に
変換することがこの機構の肝の部分です。
ボールベアリングはピストンの並進運動をスムーズにする働きをしています。
このベアリングはステアリングシャフトの外周の溝の中を流れるのですが、ボールの供給と
回収の機構が必要となります。その循環の経路にスチール製の樋を使うのですが、
不具合車の場合、そのスチール製の樋が何らかの原因で破損したという稀な現象でした。
原因を究明する試験を繰り返しましたがやっと見つけたのが縁石に接触したタイヤをゆっくり操舵して
車両を発進した時、スチールの樋に高い応力が瞬時に発生することを実証しました。
宅配車の特殊な使用状態がここで少し明らかになったと思います。
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SNS
近年、選挙の投票行動に対するSNSの影響が話題になっています。
インフルエンサーと呼ばれる人達に強く影響を受けやすい媒体で、
多くの人々に対する従来の媒体では、ファクトチェックが慎重にされるのに反して
SNSではよく吟味されていない情報が簡単に発信される傾向があります。
その結果、深く考えることをしない情報の受け手が間違った情報を信用して
さらにそれを拡散するという事態にもなりかねません。
私も技術情報を中心にブログを公表していますが、間違いをなるべく避ける努力はしていますが100%の自信はありません。
間違いがあったらすぐに訂正する姿勢が大切です。
メンテナンス
日産リーフの分解調査に立ち会う機会がありました。
シャシー関係を重点的に調査しました。
構造は標準的なもので驚くことはなかったものの
レイアウトが煩雑で分解しにくいのは致し方ないのではと思いました。
設計の段階で、整備性に配慮すべきと言っても、切羽詰まった状態では一般的にその余裕がないのは
私も経験しております。
整備性をもっと尊重すると、違った設計になったのではないかとは思います。
設計者に時間と工数の制約があって、分解と再組立まで配慮する余裕がないのが一般的です。
商品力としての整備性が重視されてはいないのはよくあることです。
スタビライザーは最後にレイアウト設計するのか、非常に複雑な形になっています。
ごちゃごちゃ曲げても一般的に機能上は問題ないことが、この複雑さが残る理由でしょう。
整備性を重視した設計というのは掛け声だけになることがよくあることです。
日本車は中国を含めた海外の電気自動車に比べて、今でもなお、スチールの使用割合が高いと感じたのは、
分解作業場に外国製の車両(欧州、米国、中国、韓国)も分解調査されているのを見て、比較できたためです。
アルミニウムのギガキャストは部品の結合部を省略できろ反面、設備投資に莫大な費用を要するので経営者の思い切った決断が必要です。
リスクを嫌うであろう日本の経営者にはハードルの高い決断と思われます。
またコスト面でスチール製が優っていることもあって日本では今まで普及していません。
品質について
大学講義内容に品質関係を追加し始めました。
品質管理
かつて田口先生ご存命のころ品質工学会に所属しておりました。現在、トラック開発の実務から遠ざかって、具体的な技術テーマを追求する機会が少なくなりましたので離れました。
時期を置いて、品質工学に関してまとめる必要が生じましたが、難解さに戸惑っています。