複合機能
一つのコンポーネントに複数の機能を持たせることは複合機能と呼ばれています。
これは従来の常識では避けた方がよいとされています。
例えば、サスペンションを例に挙げると上下方向の緩衝のためのばね系は左右の間隔を開けると車体のロールに対する
反力を生む装置とも考えられます。
この値はロール剛性と言い、一般的には大きい値が望ましい。
ところが上下のばね定数は小さい方が路面からの衝撃を回避するうえで望ましい。
スタビライザーはシャシーのメインのばねとは別に設けられています。
シャシーのばねとアブソーバーのみの系は複合機能の系です。
ロールに対して別の装置をスタビライザーとして設定することで複合機能が避けられます。
設計の近代化とは複合機能から別機能別部品化とするとされてきました。
歴史上、比較的新しいサスペンション構造として、マクファーソンストラットというものが大衆車で
主流となっています。これは典型的な複合機能です。
ダンパー機能と転舵軸機能の統合にほかなりません。
この方式は現在十分な市民権を得ているようです。
おそらくコスト的に有利な面が強調されているものと思います。
商用車系にはストラットの構造上弱点があるため、採用例はありません。
ただ世界一の生産量を誇る日本の乗用車メーカーでは、質量が大きい高級車にも採用されています。
複合機能に関するこれまでのセオリーの是非が問われるかもしれません。
トラックのフレーム
メーカー勤務時代、担当した時間が長かったのに題記の部品がありました。
これは歴史上、しばしば品質上の問題が発生しました。
かなり昔のことですが、1980年代に中国向けの大型トラックで強度問題が発生し、中国当局に多額の賠償金を
とられたということがありました。
このころは実際に担当してはいませんでしたが、その後のフレームの形態が変わりました。
簡単に言えば、サイドレールとクロスメンバーの締結にサイドレールのフランジ面を使用することを避け
サイドレールの竪壁部(ウエブ面)のみに変更しました。
車体がねじり入力を受けたときに締結部の応力集中を避けるのに適した構造にしました。
フレームは、主に上下負荷に対して適した構造ですが、悪路走行時などでのねじり変形に対して脆弱性を有しています。
当時の中国は現在とは違って道路状況が非常に悪く、とんでもない悪路がありました。
そこに当時の先進国日本の高性能エンジンを投入したため、高速走行時にフレームが損傷したということです。
当時から小型トラックのキャンターは欧米流のフレーム結合構造を採用していましたのでフレームは頑強でした。
このことを機に全車のフレーム構造をウエブ締結に変更しました。
時代が進んで最近に大型トラックのハブの破損が問題化しました。
これはフロントラジアルタイヤにかかる横方向の力が原因であることは明らかです。
時代とともに部品が進化するのに伴ってその影響を受けるほかの部位が必ずあります。
ちこちゃんに叱られるような設計者がぼーっとしていればこのようなリコールを繰り返すことになります。
設計の後輩の奮起に期待したいものです。
フェールセーフ
工業製品においては保安部位に関してフェールセーフの考え方で処置がされています。
自動車のステアリング機構においては、ステアーバイワイヤーの回路の二重化などがフェールセーフと
されています。しかし、基本原理的に見た場合、かじ取り装置はボールジョイントを介しての結合を余儀なくされています。
ここへのフェールセーフの適用は不可能で、ボールジョイントのみの信頼性に依存しています。
無給脂型は現在デファクトスタンダードですが、脆弱性を内包しているため、日本の整備士から嫌われています。
ボールを内包するラバーブーツのシールリップからの水の侵入の危険性があって整備担当者は給脂への変更を要望することが
あるようです。
無給脂型においても、リップ形状の改善などの対応策が進められています。
それでも徹底的な整備がなければ安全性は保障されません。
現在、日本のトラックは充実した整備によって安全性が保障されていると思います。
品質
シャシーの設計責任者をしていた時、市場からの不具合情報の処理に頭を悩ませていました。
品質工学との出会いがそのころあり、これによって市場不具合に対処できるのかと思っていました。
結論から言うと品質工学は、開発の初期から製品のロバスト性を希求するもので市場で起きた不具合の対策ツールでは
ありません。その辺の誤解が開発サイドによくあって個々の品質問題に対して適用を試みようとしていることもあります。
開発の現場では一般的に余裕があまりなく、対処療法として品質工学を考えている例が見られます。
本来は製品開発の初期から適用するべきです。
品質工学=タグチメソッドはアメリカから適用されてきた経緯があります。
私がアメリカに駐在していたころ、アメリカの大手自動車会社のエンジニアから
Do you know Mr.Taguchi?という質問を突然受けたのを覚えています。
その時はなんのことかわからなかったのを覚えています。
当時のアメリカでTaguchi methodが有名であったのではと推察します。
現在、品質工学会からも脱退しておりますので、その方面の情報に接する機会がなくなっておりますが、現在も活発に活動されていることを
期待しています。
アドブルー
石油輸入障害の影響を受けてアドブルー不足が問題になっています。
かつて大手の国際的なトラックグループで働いていた折、ドイツで燃料タンク関係のエ
ンジニアのグループの会議に出たときアドブルーも問題の一つとなっていました。
これの取り扱いは意外と面倒で、凍結の防止などにも神経を使う必要があり、ヒーター
装置をも必要としています。
この原理は尿素を排出ガスに噴射することによってNOXをH2OとN2にするという根源的な
排出ガス処理処理技術で世界に普及しています。
排出ガス対策で、ヨーロッパを中心とした技術で
EURO 6. というガス規制に定められていて米欧中国日本で法規制されています。
トランプ大統領はバイデン政権が進めた地球温暖化対策などにことごとく違を唱え化石燃
料によるガスの排出規制に反対のようですが、アドブルーにはまだ気づいていないようです。
これに関する不正は比較的容易に起こりそうな気がしますが
中国でも今のところまだ大きな話題になっていないようです。
建前的には法に厳格に従っているということのようですが、複雑なディバイスをめぐって裏口が必ずあると思います。
