2024-11-28 17:15:00
品質管理
トラックのステアリング系の担当をしていた時、急にハンドルの操作が重くなったというクレームがありました。
高速走行時に発生したら人命に関わる大きな問題になったと思われます。
幸いこの現象は低速走行時にのみ発生するということでした。
最終的にはリコールしましたが、原因を究明にはずいぶん手間をかけました。
ステアリングギヤはインテグラル型というものでした。
この機構は歴史が長く、トラックの車軸車には定番のものです。
基本的にはステアリングポンプで生成した油圧をパワーピストンが受けてパワーアシストとして機能します。
この変異をピットマンアームの回転に変換して操舵力にします。
問題はハンドホイールの回転をシリンダーの並進変異に変換する機構です。
リサーキュレーティングボールというボールベアリングを使ってステアリングシャフトの回転運動をピストンの並進運動に
変換することがこの機構の肝の部分です。
ボールベアリングはピストンの並進運動をスムーズにする働きをしています。
このベアリングはステアリングシャフトの外周の溝の中を流れるのですが、ボールの供給と
回収の機構が必要となります。その循環の経路にスチール製の樋を使うのですが、
不具合車の場合、そのスチール製の樋が何らかの原因で破損したという稀な現象でした。
原因を究明する試験を繰り返しましたがやっと見つけたのが縁石に接触したタイヤをゆっくり操舵して
車両を発進した時、スチールの樋に高い応力が瞬時に発生することを実証しました。
宅配車の特殊な使用状態がここで少し明らかになったと思います。
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